業界リサーチにAIを使ったら、作業時間が半分以下になった話

半信半疑、だった。ただ、「リサーチ・情報収集はAIの得意領域のはず」という読みがあった。大量の情報を整理して構造化する——それはまさにAIが力を発揮する場面だと思って、試してみた。結果は、その読み通りだった。少なくとも業界・トレンドのリサーチに関しては。
何をリサーチしたのか
ある案件で、クライアントの業界の最新トレンドと競合動向を把握する必要があった。以前なら、こういう作業の流れはだいたいこうだ。
- 業界メディアやレポートをひたすら読む
- 気になる情報をメモやスプレッドシートに貯める
- 点在する情報を整理して、「で、今この業界はどこへ向かっているのか」という構造をつくる
- 抜け漏れが怖いので、もう一周確認する
これを真剣にやると、半日近くかかることがザラだった。
AIを使ってみた
使ったのはChatGPTとClaude、両方を併用している。プロンプトの細かい文言は正直もう覚えていないが、やったことはシンプルだ。
「この業界で今起きている変化を教えてほしい」「主要プレイヤーがここ1〜2年で打っている施策を整理してほしい」——そういう問いを投げながら、出てきた情報を確認・深掘りしていくスタイル。人間でいえば、優秀なリサーチアシスタントと壁打ちしながら情報を整理していく感覚に近い。
結果として、同じクオリティのリサーチが半分以下の時間で終わった。体感ではなく、実際にそう感じた案件が複数ある。
2つのAIをどう使ったか——「相互査読」という手法
今回、ChatGPTとClaudeの2つを併用したのには明確な理由がある。両方に同じ調査をさせ、その結果を「お互いに確認」させたのだ。
具体的な手順はこうだ。
- 並行調査: ChatGPTとClaude、両方に全く同じプロンプト(「〇〇業界の最新トレンドを整理して」など)を投げる。
- 結果の交換: ChatGPTの出力結果をClaudeに、Claudeの出力結果をChatGPTに入力する。
- 矛盾のあぶり出し: 「この2つの調査結果を比較し、共通している確からしい情報と、矛盾している(あるいは片方にしか記載がない)情報のリストを作って」と指示する。
この「AI同士の壁打ち」をさせることで、AI特有の事実誤認(ハルシネーション)をかなり高い確率で防ぐことができる。矛盾が出た箇所や、片方しか言及していない怪しい箇所だけを、人間が一次情報(企業のIRやプレスリリースなど)でピンポイントに確認すればいいからだ。
何が良かったのか——「網羅性」
一番助かったのは、網羅性の高さだ。
人間がリサーチすると、どうしても「知っている領域」に引っ張られる。よく読むメディア、よく調べる切り口——無意識のバイアスがかかる。AIはその偏りが少ない。「この切り口は考えていなかった」という視点を出してくれることが、思った以上に多かった。
もちろん、一次情報ではないし、最新の数値は自分で確認が必要だ。でも「大枠の地図を描く」段階では、AIは本当に速い。
何が足りないのか——「一次情報と文脈」
AIが出してくれる情報には、どうしても限界がある。
直近のニュースや、まだ広まっていないローカルな動き。クライアントの業界特有の商慣習や、「この会社はこういう文化だから、この施策はハマらない」という肌感覚——そこはAIには出せない。結局、AIが出してくれた地図に対して、自分の経験と一次情報で「肉付け」する作業が必要になる。
これは欠点というより、役割分担だと思っている。AIが骨格を組んで、人間が血を通わせる。そのコンビネーションで、以前より速く、以前より精度の高いリサーチができるようになった。
この実験から学んだこと
一言でまとめると、「AIはリサーチの"初速"を劇的に上げてくれる」ということだ。
ゼロから情報を集め始める最初の1〜2時間が、一番しんどい。何を調べればいいかわからないまま、とにかく手を動かす時間。AIはその「立ち上がり」を大幅に短縮してくれる。
ただ、ここで一つ気になることがある。今回このリサーチが早く終わったのは、私がある程度うまくAIを使えたからだと思っている。どう問いかけるか、どこを深掘りするか、何を疑うか——それを判断する力が、AIの出力の質を左右する。
つまり今は、「AIを使いこなせる人間」と「そうでない人間」の差が、仕事の質と速度に直結している段階だ。
でもその差は、いつまでも続かない。AIを使いこなすスキル自体が自動化・補助される方向に進んでいるし、プロンプト設計のベストプラクティスはすでに広まっている。「AIを使える」が当たり前になったとき、次の差別化は何か——それが今、私が一番考えていることだ。
次の実験
次回は、実際にどんな問いかけをしているのか、プロンプトの構造を意識的に記録しながら試してみる。「なんとなく使っている」から「再現できる形で使う」に変えることが、このブログの次のテーマになりそうだ。




